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【ケーススタディ】[他害]本人の積極性、好奇心を生かす

目次

サポートの実施方法

発達障害を持つ子の中には、お友達のことを叩いてしまったり、突き飛ばしてしまったり、手が出てしまったり・・また、先生の腕に噛みついたり、怒って物を投げて壊してしまったりと、いわゆる「他害(たがい)」と言われる行動 をしてしまうケースがあります。

「他害行動」をしてしまう子のサポート方法について、ポイントは下記になります。

サポートの実施方法

大人がその場に居合わせること
(=手が出る前の様子がわかる手が出る前に関われる

  1. 手を出す前に関わって、望ましくない経験を繰り返させない
  2. 本人の思い・考え・意志を大事にして、やり取りを成長につなげていく
  3. 可能であれば、子供同士の関係をより良いものにしていく(お互いの理解などを促しながら)

大人が「子供の状況」にアンテナを張りつつ、見守る。
「子供の手が出る前」に関わって、成長につなげる。

他害のことに取り組む時、大事なのは?

  • 『子供の手が出てしまう前に対応する』
  • 『目的は、他害を無くすことではなく、子供の成長を促すこと』

他害に関して、実際の変化は?

「子供の手が出る前」の段階で、子供の思い、考え、欲求を見つけ、その方向にサポートをする。子供の「その部分」が成長すると、結果的に手を出す必要がなくなる(他害がなくなる)という変化が表れます。

ケーススタディ(実際の事例)

今回登場するのは、小学1年生の男の子『Eくん』。ADHD(多動型)の診断があり、保育園の頃から子供同士で「手を出してしまう行動(他害)」が見られました。

『Eくん』には友達と仲良くしたい気持ちがありましたが、つい相手に “ちょっかい” を出し過ぎたり、距離感がうまくつかめなかったり・・、感情の起伏が激しく、特に「間違いを指摘されたり」「注意されたり」すると、反応が激しくなってしまうことがありました。

家庭での様子はというと、気持ちが高ぶった時には、やはり家でも暴れていたのですが、『Eくん』の家庭では、その都度、「会話やスキンシップ」を大事にしており、”家族の仲” はとても良い状態。子育てに関して、「本人が興味を持ったことは応援する」という明確な方針を持っていました。

『Eくん』の特徴について

・「人」がとても好き。
・周囲の人への「働きかけ」はとても旺盛。
(家族以外の大人に対しても)
・「自分の思い」を言葉にするのには時間がかかる。
・「耳」からの認知は “やや苦手”。
(会話でのやりとりが “通りにくい” 場合がある〈本人が黙ってしまうなど〉)
・「視覚」(本や図鑑)からの認知はとても得意。
・全体的に好奇心旺盛で「活発で積極的」。

『Eくん』へのサポート開始

サポートの開始にあたり、まず「週に3回・1時間半」。10人ほどの「グループを通じたサポート」を行いました。
開始して早々のことです。

『Eくん』は、他の子が遊んでいた “人形のおもちゃ” をひょいと取りあげました。
そして、その子に「返して!」と強く言われると嫌になり、すぐに「やけっぱち状態」へ…。
『Eくん』は “人形のおもちゃ” を床にたたきつけ、「コレ、お前のなのかよっ!」「証拠を見せろ!」などと言い返しながら、次第に自分が悲しくなってきて、大泣き・・。

これには、言われた子もビックリして.. もう、おもちゃどころではありません…。

その後の活動でも、他の子に対する “ちょっかい” が多く見られました。
たとえば、他の子に “ぬいぐるみ” を投げて当ててみたり、「どけっ!」と言いながら、相手を軽く押してみたり。当然、相手の子たちに、何かを言い返されます。

『Eくん』は相手に言い返されると、すぐに嫌になってしまう。怒りたくなってきて・・「うぉー!」と雄叫びを上げて、「お前なんかどうせできないくせに、勝手にしろ!」「そんな事言うなら、もう何もしてあげないからな!」など、捨てセリフを吐き、悲しくなってきて、また涙・・。

感情の起伏が激しいのです。

このように、保育園や学校でも『Eくん』の「雄叫び連発」、「大号泣」、「感情の大開放」の行動が頻繁にあり、目立つ、周りの活動が止まってしまうなどがあったため、問題視されてきたようです。


しかし、本人の様子を冷静に見てみると「手が出てしまっている部分」は、ほんの少し。相手に怪我をさせたこともなく、物も投げたりしますが「壊してしまう」ということはありません。
(もちろん、押されてビックリしている相手には、大人がケアを行います)

『Eくん』へのサポート方針

他害への取り組み、サポートを行う際のポイントと目的は、
「他害をなくすことではなく、本人の成長を促すこと」です。

そして、その「本人の成長を促す」ためには、 はぴねすメソッドのコーナーで紹介している基本項目『本人の気持ち・考え・意志を大事に』という方針で “やり取り” をしていくことが重要になります。


まずは、子供たちの様子が見える位置に「大人」がいて、パッと関われるようにしておくこと。

『Eくん』の場合では、「他の子の使っているおもちゃ」を取ってしまったら、すぐに大人が介入し「元々使っていた子におもちゃを返す」という“やり取り”をすることになりました

「よくないやり取り」のパターンを「繰り返させない」
まずはこの部分を大事にサポートです。

そして、そこでの『Eくん』とのコミュニケーションを重視。
「人が使っていた”モノ”は取らないでね♪」
「他の人のことは放っておいていいから、自分が “面白そう” と思うことを見つけてやって!」

と伝えました。

すると『Eくん』、別に怒りもしないし、泣きもしません。

しばらくすると「じゃぁ…」と言って、アレコレ自分なりのアイデアを出して、やってみたいと言うようになりました。

「工作」に取り組んでみたり「スライム作り」をしてみたり「簡単な科学実験」をしてみたり・・「自分自身の活動」に移ると、持ち前の好奇心を発揮。「スライム作り」に関しては、分量を変えて何種類も作り、違いを比べたり、時間が経つとどう変化するかを見てみたり、かなり優れた思考力、観察力、洞察力を持っていることがうかがえました。 活動を進めていくうちに、本人もイキイキしてくる。コレは『Eくん』の思い、気持ちが向かっている方向であろうということで、『Eくん』へのサポート方針を下記に決定しました。

  • 「元々の好奇心」を生かし、「本人が興味を持った内容」をメインに活動。
  • 「他の子たち」との「コミュニケーション」は、随時大人がサポート。

その後の『Eくん』へのサポートの様子を紹介します。

一緒に活動していて見つけた、本人が進みたい方向 =「興味を持った活動を本人のペースでやってみる(周りの子とのやり取りよりも優先)」という方針でのサポートです。

『Eくん』へのサポート実例

その後「科学実験の一環」として「氷作り」をすることになった時のことです。
『Eくん』本人より「ジュースを凍らせたらいいんじゃない?」という、とても魅力的な提案があり、早速実施してみることに。

実際に「ジュースの氷」ができあがると、これが「とても美味しい♪」(満面の笑み)。

『Eくん』は、この “大発見”「みんなにも伝えたい!」ということで、周りに声かけをし「”おいしい氷作り” のリーダー」として動き出すことになりました。周りのみんなも、とてもはりきっています。

「”おいしい氷作り”」がはじまると、『Eくん』は教え方がとても丁寧で、うまくできない子にも優しい。「これが出来上がると、むっちゃウマいからね♪」と話かけたり、相手への「ジュースの氷」の魅力の伝え方だってばっちりです。”いざこざ” もなく、「終始、仲間たちとの楽しい活動」となりました。

こうして、周りのメンバーからも「見直されたり」「仲間という感覚」も育まれ、『Eくん』は少しずつ「仲間想いの気持ち」を発揮するようになっていきました。

たとえば、こんな「仲間を思いやる会話」も見られました。

Eくん:「アイツ(友達のこと)、これ “たぶん好き” だから教えてあげない?」
Eくん:
「ちょっとみんな!○○ちゃんは大きい音が苦手だから…もう少し静かにしてあげて!

などです。

さらに、みんなでおやつを分ける際、「メンバー同士が揉めそうになっている」と、「待って待って!おみくじにしよう!」と提案し、自分でせっせとおみくじを作り、友好ムードで話をまとめたり、ということも。

サポート開始から6ヶ月後

サポート開始から半年ほどが経過し『Eくん』は「学校でも家でも落ち着いて過ごせる」ようになりました。

その後もたまに “仲間との小競り合い” はあったものの、引き続き「年下の子」を仲間に入れてあげたり「パソコンの使い方がわからない子」には、パッと教えてあげたり、活躍の場面が増えていきました。

今回のサポートポイント

まずは基本中の基本である

  • 「活動する場面に一緒にいる」
  • 「”本人の様子” がわかるように、”手が出る前” に関われるようにする」

というスタイルでサポート。

『Eくん』の活動の様子(「周りの子」が気になったり「ちょっかいを出すこと」があまりに多い状況)から、今回は「周囲との関係」ではなく、本人が「マイペース」で動けるように「本人の積極性と好奇心の強さを生かす方向」へ方針を決めました。

そして、本人には「あまり周りの子たちを気にせず、自分で面白そうなものを見つけトライしてみよう」と提案をし、本人も合意。具体的なサポートがはじまっていきました。

『Eくん』が、工作や実験など「本人のマイペース」で進められるようになると、活動がとても旺盛で発展的になり、興味の持続期間も長くなっていきました。本人のコンディションも安定的になり気持ちの面でも充実していきました。

「ジュースの氷作り」では、自分で「皆とシェアしたいもの」を見つけては「仲間に声をかけて実施」。この様な “やり取り” を通じ『Eくん』の人間関係やコミュニケーション力も「発展していった」というケースです。

おわりに

元より人好きで感情が豊かな『Eくん』、

人に対する思い、家族に対する思い、
さらに、自然や地球に対する思いがたっぷりある。


皆とシェアしたくなるようなものをいっぱい見つけ、コミュニケーションの方法を身につけたことで、かつて問題視されていた”ちょっかい”は、「よいもの」「仲間と分かち合う」という内容に変わっていきました。本人にも周りの人たちにも、断然、笑顔が増えました♪

こうした成長は、さらに次の成長につながっていきます。最近(小学5年の後半)では、自分から周りとのコミュニケーションを少し減らし(本人いわく「省エネモード」)、自分の興味がある活動を優先しているとのこと。『Eくん』が、自分自身を磨いていく感じ、もちろんコレも応援したいと思います♪

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この記事を書いた人

日本教育臨床研究所認定カウンセラー
1975年東京生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒。日本教育臨床研究所卒。一般社団法人 For All Children Team 代表。

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